発電所の隣に、AI工場。千葉の2.3兆円データセンターが本当に買っているのは「時間」だった
JERA・Dell・RHAELMが、千葉火力発電所の隣に最大40万kW・総額約2.3兆円のAIデータセンターを建てる計画を発表しました。40万kWは家庭何世帯分で、GPUなら何個分か。なぜ街なかではなく発電所の隣なのか。東京でデータセンターに電気が届くまで8〜10年かかるという分析、国の需要予測、米国の先行例、CO2の試算まで、公開資料とデータで読み解きます。

発表したのは、日本最大の発電会社JERA(ジェラ)、年商1,000億ドルを超える米国のIT大手Dell Technologies、ロンドンを本拠とするAIインフラの開発会社RHAELM(レルム)の3社です。電気の規模は最大40万kW。総額は150億ドル以上、日本円で約2.3兆円。2028年ごろの稼働開始を目指しています。
JERAジェラ
日本の電気の約3割をつくり、その燃料を世界から集めてくる、日本最大の発電会社
- 2015.04東京電力と中部電力が設立2社が半分ずつ出資。まず、発電の燃料を世界から買い付ける力を一つにまとめた
- 2019.04火力発電所を引き継ぐ2社の火力発電所を統合。燃料の確保から発電までが、1社にそろった
- 2020.102050年にCO2ゼロを宣言国内外の事業で、2050年に排出ゼロを目指すと表明
- 2025.10発電所にデータセンターを横浜市と、発電所の構内へのデータセンター誘致を検討する覚書。2026年2月にはAWSとも協議に合意
- NOW千葉でAIデータセンター構想2026年10月、DellとRHAELMと組み、国内最大のAIインフラの検討へ
JERAは、ふだん名前を聞く機会こそ少ないものの、日本の暮らしと産業の電気を根っこで支えている会社です。2025年度に発電した電気は2,286億kWh。国内の電気事業者がつくった電気の約3割にあたります。国内の発電設備は約5,500万kWで日本最大。千葉、富津、川崎、横浜、品川と、東京湾をぐるりと囲む発電所が、首都圏の電気を生み出しています。
すごさの本質は、発電所の手前にあります。燃料のLNG(液化天然ガス)を世界から買い付け、自社の船団22隻で運び、国内11か所の基地にためて、電気に変える。この一連の流れを丸ごと担い、扱うLNGは年間約4,000万トンと、同社によると世界最大級です。2025年度の売上は約3兆500億円。燃料を世界から集め、電気に変えて届ける。日本のエネルギーの入口と出口を、まとめて握っている会社だと言えます。
そのJERAが、2026年6月の説明会で成長の柱の一つに挙げたのが、データセンターへの電気の供給です。AIの計算には、昼も夜も途切れない大量の電気が要ります。電気をつくる側が、AIを動かす側に一歩近づこうとしている。千葉の計画は、その最初の大きな一手です。
2.3兆円も40万kWも、大きすぎてピンと来ませんよね。
そして、いちばん気になるのは場所です。なぜ、わざわざ発電所の隣なのか。調べていくと、この計画が手に入れようとしているのは、電気そのもの以上に「電気を待たなくていい時間」だと分かってきました。
千葉のAIデータセンター、4つの疑問に先に答えます
2.3兆円で買おうとしているのは、電気の量より「待たずに使える時間」。
Q3なぜ発電所の隣?
決まったのは「覚書」。2.3兆円は土地からGPUまでの総額
まず、何が決まったのかを整理しておきます。
10月1日に3社が結んだのは、事業の基本構想と事業化の検討についての覚書です。建設の最終決定や資金集めの完了は、まだ発表されていません。RHAELMの発表によると、覚書とは別に、JERAと主要な条件についての合意(Heads of Terms)も結んでいます。
計画の中身は、こうです。
- 場所:JERAの千葉火力発電所(千葉市中央区)の構内と隣の土地
- 規模:最大40万kW
- お金:全段階で150億ドル以上、約2.3兆円。土地、電力設備、建物、AIの計算機までを含む額です
- 時期:2028年ごろに稼働を始める。JERAの担当者は、2029年の全面稼働と、15〜25年の電力の供給契約を想定していると説明しています
- 電気の受け方:動いている発電設備から、構内で電気を受ける(behind-the-meter)
役割は、JERAが電気と土地、Dellが計算機の基盤、RHAELMが開発と資金集めです。米国の投資会社Apolloも、RHAELMの投資と資金調達の相手として加わる予定です。各社がいくらずつ出すのかは公表されていません。つまり「JERAが2.3兆円を投じる」わけではありません。
ちなみにRHAELMは、英国の登記を見ると2026年1月に設立された新しい会社です。8月に今の社名に変わりました。経営陣の経歴は会社の説明にありますが、稼働しているデータセンターの実績は、公開資料からは確かめられませんでした。
「国内最大」というのも、JERAの説明です。単一の拠点のAIインフラとして日本で最大、中国を除くアジアでも最大規模だとしています。
40万kWは、家庭72万世帯分。GPUなら十数万個
40万kWの大きさを、いくつかの物差しで測ってみます。
いちばん近い物差しは、隣の発電所です。千葉火力発電所の総出力は438万kW。LNG(液化天然ガス)を燃やす発電設備が11組並んでいて、そのうち2014年に動き始めた新しい3組は1組50万kWです。40万kWは発電所全体の約9%で、大きい発電設備1組の8割ほどにあたります。

次は家庭です。データセンターは昼も夜も動き続けます。仮に年平均で80%の力で動くとすると、1年間に使う電気は約28億kWh。日本の家庭は1世帯あたり年3,911kWhの電気を使っています(2023年度)。割り算すると、約72万世帯分です。
千葉県全体と比べると、県の年間の電力需要(2024年度)の約8%。1つの建物で、県の電気の1割近くを使う計算です。
もちろん、これは使う電気の「量」をそろえて比べただけです。この計画で家庭の電気が足りなくなる、という意味ではありません。
GPUに回るのは、40万kWのうち約300MW
では、この電気でAIの計算機がどれだけ動くのでしょうか。
ここで1つ、知っておきたい言葉があります。
PUEを1.2と置くと、40万kWのうち計算機に回るのは約33万kW。残りは冷却や電源の設備に使われます。さらに計算機の電気の9割がGPUを積んだラック(棚)に回るとすると、GPUのラックに使えるのは約300MWです。

NVIDIAのGB200 NVL72は、1ラックにGPUを72個積み、約120kWを使います。300MWなら2,500ラック、GPUは約18万個です。次の世代のGB300なら約16.4万個、さらに次のRubin世代は1ラックの電気が約225kWになるという調査会社の推定があり、それで計算すると約9.6万個になります。
新しい世代ほど、同じ電気で動くGPUの「個数」は減ります。ただ、1個あたりの性能は上がっていくので、個数が減っても計算の力が落ちるわけではありません。
発電所の隣を選んだのは、電気の「待ち時間」を飛ばすため
データセンターは、ふつうは電力会社の送電網につないで電気を受けます。ところが、首都圏ではこの「つなぐ」までが長い行列になっています。
東京電力パワーグリッドの資料によると、2026年3月末までにつかんでいるデータセンターなどの接続の申し込みは、累計で約1,790万kW。2037年度以降の分も含み、すべてが実現するわけではありませんが、千葉の計画の約45件分にあたります。
送電網の工事にも時間がかかります。データセンターが集まる千葉県印西市では、東京電力が新しい変電所をつくりました。ふつうは8年かかる工事を、4年9か月に縮めたことが、わざわざ成果として報告されています。縮めても5年近くかかるわけです。
不動産サービス会社のJLLは、データセンターが電気を確保するまでの期間を、東京で8〜10年、大阪で3〜5年と分析しています。

ここで、千葉の計画の意味が見えてきます。
発電所の構内なら、送電網の行列に並ばずに電気を受けられます。JERAは英語の発表で、この方式ならふつうに送電網へつなぐより数年早く始められると説明しています。
AIの世界では、1年違えば計算機の世代が1つ変わります。8年待っているあいだに、その計算機はもう古くなっている。2.3兆円の計画が本当に買おうとしているのは、この「待たずに済む時間」だと私たちは見ています。
国は「地方へ」、それでも首都圏に建つ理由
国の方針と比べると、少しねじれも見えます。
国は2025年から、官民の懇談会で、電気と通信の整備を一緒に考える「ワット・ビット連携」を進めています。その取りまとめでは、データセンターを北海道や九州など、電気に余裕があり再生可能エネルギーも使える地域へ分散させる方向を示しました。JLLによると、日本のデータセンターは今、東京と大阪に約9割が集まっています。
それでも千葉が選ばれたのは、大きな発電所と送電設備、使える土地が、すでに首都圏にそろっていたからです。3社も、既存の発電設備と隣の土地を使えることを、早く始められる理由に挙げています。利用する企業がまだ公表されていないので、「お客さんの近く」という理由まであったのかは分かりません。
予測は、増えながらも揺れている
国全体では、データセンターの電気はどれくらい増えるのでしょうか。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)の最新の想定では、データセンターの新設・増設で増える最大の電力は、2035年度に661万kW。千葉の計画の約16件分です。
ただし、この予測は1年で大きく動いています。2030年度の見込みは、1年前の想定では440万kWでした。最新の想定では328万kWと、約25%下がりました。
ところが、先の年まで見ると様子が変わります。2034年度の見込みは、1年前が616万kW、最新が615万kWと、ほぼ同じなんです。

つまり、行き着く先の量はほとんど変わらず、そこへ着く時期が後ろにずれました。OCCTOは、申し込みの確からしさや計画の情報を一件ずつ見直して、数字に反映しています。需要はあるのに、電気と工事が間に合わずに後ろへずれていく。予測の修正は、そう読むのが自然です。だからこそ、発電所の隣で「待たずに始める」計画に価値が出てきます。
米国でも「発電所の隣」は一つの答えに落ち着いていない
発電所の隣にデータセンターを置く方法は、米国が先に試してきました。
原子力発電所の隣でデータセンターを動かしていたTalen EnergyとAmazonは、2025年に、送電網を通す最大192万kWの長期契約に切り替えると発表しています。きっかけの一つは、2024年に米国の電力の規制機関FERCが、隣接のデータセンターへの供給を増やす契約の変更を退けたことです。ほかの利用者の電気代や、停電への備えが論点になりました。FERCはその後、新しいルールづくりを電力の運営機関に求めています。
MicrosoftとThree Mile Island原発の契約は、よく「原発直結」と紹介されます。実際は、止まっていた原発を再び動かし、送電網に電気を戻す20年の購入契約です。xAIは、ガスタービンと蓄電池を自前で置いて電気を早く確保する方法をとりましたが、大気汚染をめぐって環境団体から批判を受けています。
電気を早く手に入れる方法は、国や案件ごとにまだ手探りです。日本では、千葉の計画がその最初の大きな例になりそうです。
残る宿題は、CO2と電気の値段
最後に、まだ答えが出ていない点を見ておきます。
1つ目はCO2です。千葉火力発電所の燃料はLNGで、石炭より排出は少ないものの、ゼロではありません。同じ型の発電の参考の排出係数(1kWhあたり0.341〜0.362kg)を使うと、40万kWを年80%で使った場合、燃やすときに出るCO2は年およそ96万〜102万トンになります。
JERAは2050年に国内外の事業でCO2排出をゼロにする目標を掲げ、LNG火力では水素の活用を進めるとしています。ただ、2028年に動き始める時点の電気は、LNGが中心になるはずです。
2つ目は電気の値段です。40万kWを1年中使うと、電気の値段が1kWhあたり1円違うだけで、年35億円の差になります。15〜25年の長期契約でどの値段に決めるのかが、この計画の採算を左右します。値段は公表されていません。
ほかにも、冷却の方式と水の使い方、雇用、発電所が止まったときの予備の電気の受け方は、まだ分かっていません。地域にとっての良し悪しは、これらが公表されてから判断することになります。
AIの競争は、計算機から電気、そして「時間」へ
千葉の計画を調べて見えたことを、3つにまとめます。
AIの値段は、どこかの発電所で決まり始めている
私たちが毎日使うAIも、どこかのデータセンターの電気で動いています。今回、40万kWを家庭やGPUに置き換えて計算してみて、AIの「使える量」と電気の量が、ほぼそのままつながっていることを実感しました。電気をめぐるAIの争奪戦は、千葉の湾岸で目に見える形になったと言えます。
お金より、待ち時間のほうが高い
東京で電気を確保するまで8〜10年。AIの計算機は、その間に何世代も入れ替わります。2.3兆円という金額より、2028年に始められることのほうが価値が大きい。今回の計画は、AIのインフラでは「いつ始められるか」がいちばん高く売れることを示した例だと思います。
発電会社が、AIの会社になっていく
JERAは、電気を売る会社から、電気と土地と計算機をまとめて提供する側に一歩踏み出しました。2030年代に数百万kW規模という構想どおりに進めば、日本のAIの計算力の地図は、発電所の地図と重なっていくはずです。CO2と電気の値段という宿題に、どう答えを出すのか。続報を追いかけます。
SOURCES ── 出典・参考
- JERA『国内最大規模のAIインフラ開発に向けた覚書の締結について』(2026年10月1日)
- JERA『MOU for the Development of Japan's Largest AI Infrastructure』(2026年10月1日)
- RHAELM『JERA, Dell Technologies and RHAELM sign MOU』(2026年10月1日)
- RHAELM『Sovereign AI becomes RHAELM』(2026年9月4日)
- UK Companies House『RHAELM LIMITED(17001538)』(2026年10月3日閲覧)
- Reuters『JERA teams up with Dell, RHAELM on AI infrastructure development in Japan』(2026年10月1日、MarketScreener転載)
- クラウド Watch『JERAら、千葉に最大40万kWのAIデータセンター』(2026年10月2日)
- ITmedia ビジネスオンライン『総額2.3兆円、千葉市に巨大な「AIデータセンター」建設へ』(2026年10月1日)
- JERA『千葉火力発電所』(2026年10月3日閲覧)
- JERA『千葉火力発電所 設備概要』(2026年10月3日閲覧)
- 環境省『家庭部門のCO2排出実態統計調査 世帯当たり年間エネルギー消費量』(2023年度確報、2025年6月25日公表)
- 環境省『都道府県別電力需要量』(2024年度値)
- NVIDIA『DGX GB200 User Guide: Hardware』(2026年9月17日更新)
- HPE『NVIDIA GB300 NVL72 by HPE QuickSpecs』
- TrendForce『AI server rack power』(2026年6月25日)
- JLL『日本のデータセンター市場、東京・大阪の外へ』(2026年1月5日)
- 東京電力ホールディングス『統合報告書2024』(2024年10月)
- 東京電力パワーグリッド『投資家向け説明資料』(2026年8月14日)
- 電力広域的運営推進機関『2026年度 全国及び供給区域ごとの需要想定』(2026年1月21日)
- 電力広域的運営推進機関『2025年度需要想定 補足資料』
- 経済産業省『ワット・ビット連携官民懇談会』
- 経済産業省『ワット・ビット連携官民懇談会 取りまとめ1.0』(2025年6月)
- 経済産業省『GX2040ビジョン』(2025年2月18日閣議決定)
- ソフトバンク『大阪府堺市におけるAIデータセンターの構築について』(2025年3月14日)
- ソフトバンク『統合報告書2025』
- Amazon『AWS、2027年までに日本へ2兆2,600億円を投資』(2024年1月19日)
- Microsoft『Microsoft deepens its commitment to Japan with $10 billion investment』(2026年4月3日)
- Crusoe『Crusoe, Blue Owl Capital and Primary Digital Infrastructure enter joint venture』(2025年5月21日)
- Meta『Meta expands Louisiana data center』(2026年7月13日)
- Talen Energy『Talen Energy expands nuclear energy relationship with Amazon』(2025年6月11日)
- FERC『Order rejecting amendments to interconnection service agreement(ER24-2172)』(2024年11月1日)
- FERC『Commissioner Rosner's concurrence on PJM co-location』(2025年12月18日)
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- JERA『沿革』(2026年10月3日閲覧)
- 東京電力・中部電力『燃料・火力事業に係る包括的アライアンスに向けた合弁会社の設立について』(2015年4月15日)
- JERA『横浜市とデータセンター誘致の検討に関する覚書を締結』(2025年10月3日)
- JERA『AWSとの連携について』(2026年2月5日)
- JERA『2025年度決算』(2026年4月27日)
- Dell Technologies『Fourth Quarter and Full Year Fiscal 2026 Results』(2026年2月26日)


